総合格闘技(MMA)は、打撃・組技・寝技が入り混じるハイブリッドな格闘技。その試合は一瞬で流れが変わるため、観る者の心を釘付けにします。ですが、MMA特有の用語が多く「何を言ってるのか分からない」と感じたことはありませんか?
この記事では、初心者にも分かりやすくMMA用語を解説。これさえ読めば、あなたも解説席の言葉にうなずける“通”になれるはず!
初心者向け!MMA用語解説:カテゴリ別にご紹介
記事概要(箇条書き)
- MMAに頻出する基本用語を一挙解説
- 打撃・寝技・勝敗ルールの専門ワードも紹介
- 実際の試合実況で使われる“あの言葉”の意味も
- 見る目が変わる!実例付きで楽しく学べる
打撃編(MMA通になるための本格解説)
ストライカー(Striker)
打撃主体のファイター
キックボクシング、ムエタイ、空手、ボクシングなどのバックボーンを持ち、距離管理(ディスタンスコントロール)や角度(アングル)を駆使して戦う。
MMAにおいてはテイクダウンディフェンス(TDディフェンス)とクリンチ際の打撃(dirty boxing)がカギ。
元UFC王者のイスラエル・アデサンヤなどは「MMAストライカー」の完成形とされる。
ワンツー(One-Two)
ジャブ→ストレートの基本連打。
ただの“基本”では終わらない。ジャブで距離とタイミングを測り、ストレートで仕留めるこのセットは、フェイント・レベルチェンジ・スイッチスタンスと組み合わせてこそ真価を発揮。
例えば、ストレートを打つ直前にローキックやボディショットをちらつかせることで、相手のガードにスキを作る戦略もある。
ローキック(Low Kick)
相手の移動能力を奪う“投資型”の打撃。
ローには2種類あり、「外側(アウトサイドロー)」と「内側(インサイドロー)」。
特にふくらはぎを狙うカーフキック(calf kick)はここ数年で主流になった攻撃。
ローを効かせれば、パンチの威力・打ち合いのタイミング・テイクダウンの仕掛けすら変わる。
※ローの「カット(チェック)」=スネでブロックされると蹴った側がダメージを負うリスクも。

カーフキック(Calf Kick)
ふくらはぎを狙う“低リスク高リターン”な蹴り技。
2020年代以降のMMAで急速に評価が高まった。
ディフェンスが難しく、たった数発で相手の足が麻痺状態になることも。
ダスティン・ポイエーがコナー・マクレガーを封じたことで一躍有名に。
ただし、間合いが近すぎるとカウンターをもらいやすく、タイミングを誤ればテイクダウンの餌食にもなる。
フック(Hook)
横から回すパンチ。ショートレンジの破壊力。
クリンチ際や、カウンターの間合いで有効。
特に“ショートフック”はコンパクトで見えにくく、被弾しやすい。
逆足(オーソドックスvsサウスポー)同士の時は、リードフックが主導権を握るカギになる。
アッパーカット(Uppercut)
下から突き上げる縦軌道のパンチ。
相手の顔が下がる瞬間(ダックやレベルチェンジ時)を狙い撃つ。
テイクダウンを狙う相手に対しても有効。
MMAでは飛び込みすぎるとタックルを合わせられるため、近距離限定の読み合いで使われる。
フェイント(Feint)
実際には攻撃しない“演技”で相手を誘導する技術。
肩の動き、目線、ジャブの素振りなどを使って、相手の反応を引き出し次の一手に活かす。
特に“リアクション・フェイント”と呼ばれる技法では、相手の反射を観察し、次の選択肢を削っていく。
スイッチスタンス(Switch Stance)
構えを切り替える戦術。
オーソドックス(右利き構え)⇄サウスポー(左利き構え)を瞬時に切り替えることで、攻撃の角度・距離感・タイミングをズラす。
これが自在にできる選手は“スイッチヒッター”と呼ばれ、読み合いで大きなアドバンテージを持つ。
TJディラショーやコーリー・サンドヘイゲンなどが代表例。
グラウンド・組技編(MMAの“もう一つの戦場”を理解する)
タックル(Takedown)
立ち技から寝技へ移行する「移行技」の王道。
レスリング由来の代表技で、相手のバランスを崩し、試合をグラウンドへ持ち込む。主な種類は以下の通り:
- シングルレッグ(片足タックル):片足を掴み、バランスを奪う
- ダブルレッグ(両足タックル):腰を低くして両足を抱え込む強力なテイクダウン
- ボディロックテイクダウン:腰を抱えて崩す柔道的アプローチ
最近のMMAでは、フェイント→レベルチェンジ→タックルの連動が重要視され、“チェーンドレスリング”と呼ばれる連携型攻撃も主流。
マウントポジション(Mount Position)
グラウンドポジションの“絶対優位”。
相手の腹部にまたがるこの体勢では、以下の利点がある:
MMAでは「フルマウント(完全マウント)」と「ハーフマウント(片足挟み)」が存在し、ここからバックポジションへの遷移もよく使われる。
防御側は「ブリッジ(ウパ)」や「ヒップエスケープ」で脱出を狙うが、エネルギー消費が激しい。
スイープ(Sweep)
“不利な状況”から一気に形勢逆転する魔法の一手。
スイープとは、ガードポジション(下の状態)から相手の体勢を崩し、上下を反転して上になる技術。
BJJ(ブラジリアン柔術)の中核テクニックで、種類も豊富:
MMAにおいてスイープは難易度が高く、「下から極めるor立ち上がる」中間選択肢として使われることが多い。
クローズドガード(Closed Guard)
相手の腰を足で挟んだ“クラシックな防御体勢”。
相手に密着し、パウンドを防ぎながらサブミッションを狙う体勢。
ただし、MMAではレフェリーストップ(ブレイク)やスタンドアップの対象にもなりやすく、“攻めのガード”を展開できなければ劣勢扱いとなる。
ハーフガード(Half Guard)
片脚を絡めて相手を制御する体勢。
クローズドガードと比べて動きが自由で、スイープや立ち上がりを仕掛けやすいが、打撃をもらいやすいというリスクも。
近年では「ディープハーフガード」や「Zガード」など、パスガードを防ぎつつ攻めに転じるハイブリッド系の使い方が見られる。
パスガード(Pass Guard)
ガードを突破して上から支配する技術。
相手の脚を超えて、ハーフガード → サイド → マウント → バックと優位なポジションに移行する一連の動き。
MMAでは、このパス中にパウンドや肘を落としながら進めることで、相手の反撃を封じることができる。
「パスできる選手=勝ちパターンに入れる選手」と言っても過言ではない。
バックテイク(Back Take)
背後を奪えば、試合の主導権を握れる。
バックポジションは「リアネイキッドチョーク(RNC)」=いわゆる“裸絞め”を狙えるMMA最強の位置。
相手の動きを読みながら、ガードやパス中に「バックを取る」動きが極めて重要。
その他・豆知識編(観る目が変わる“MMAの裏側”)
オクタゴン(Octagon)
UFCの象徴である8角形ケージ。
見た目のインパクトだけでなく、戦術的要素が強く反映される構造。角が多いため、バックを取られにくく、ロープの反動も使えない。
選手はケージ際で「壁レス(Wall Wrestling)」を展開し、テイクダウンディフェンスに“ケージウォーク”を活用するのが常套手段。
また、ケージのサイズ(通常サイズ vs アペックス小型オクタゴン)によって打撃戦か寝技主体かが変わるため、戦略が左右される要素にも。
パウンド(Ground and Pound)
寝技状態での打撃攻撃。
通称「GNP(ジーエヌピー)」と略される。代表的なのはマウント・サイドポジション・バックポジションからの打撃。
以下のように多様な技術がある:
※GNPは“極めないで勝つ”ルートとして戦略的に使われるため、GNPの強さ=選手の総合力を示すことが多い。

MMA IQ
“戦術の読み合い力”を数値化できないが語られる評価指標。
具体的には以下のような場面で発揮される:
- 相手の癖を試合中に見抜き、攻防を変化させる対応力
- “流れの読み”に応じたスタンス変更、レンジ管理
- フィニッシュ狙いと判定勝ちの切り替え判断
- ローキックが効いた相手への追撃タイミング
要するに、「その場で最適解を選び続ける選手」が高MMA IQと評される。
例:ジョン・ジョーンズ、ドミニク・クルーズ、マカチェフ、アレクサンダー・ヴォルカノフスキーなどが代表格。
オープンフィンガーグローブ(OFG)
MMA特有の指が出たグローブ。
サブミッションや組技が可能な構造のため、ボクシンググローブとは異なる。
このグローブの特性により、「被弾=終わり」の緊張感が常に存在する。
ケージコントロール(Cage Control)
位置取りで試合の流れを握る技術。
打撃でも組技でも、「ケージ中央 or ケージ際」の主導権が重要。
とくにレスリングベースの選手は、ケージに押し付けて削る戦法(ケージグラインド)を得意とする。
- ケージ際に追い詰めることで、相手のステップやスイッチを制限
- 体重を預けることで、スタミナ消耗と精神的プレッシャーを与える
※判定勝負では、この「ケージコントロール」も評価対象になる。
カーディオ(Cardio)
スタミナ・心肺機能を示す格闘技用語。
MMAでは、技術・筋力・スピードと同じくらい、“カーディオ勝負”になる局面が多い。
ラウンドが進むごとにパンチは重くなり、テイクダウンも決まりやすくなる。
「この選手、カーディオやばい(=スタミナ無限)」というのは最高の褒め言葉。
まとめ|知ってるだけでMMAの楽しさが倍増!の用語集
ただの殴り合いに見えた試合が、実は緻密な駆け引きの連続だった――。
用語を知れば知るほど、MMA観戦は奥深く、戦術の妙を理解できるようになります。今回ご紹介したのはほんの一部ですが、これをきっかけに、選手の一挙手一投足が見逃せなくなるはずです。次回の観戦から、解説者と一緒に「その技」に注目してみましょう!
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